INSIGHT
素材の産地に出かけ、生産者の方々とお会いし
実際に目で見て味わって実感してから、仕入れをする。
それがおいしい料理には欠かせません。
そしてそこにはたくさんの出会いがありました。
魅力あふれる作り手や、受け継いでいきたい品々。語らずにはいられないお話を紹介していきます。
vol.2 | キムホノさんを訪ねて。
キムホノさんとの出会いは、
5、6年前、沖縄の「陶 よかりよ」というお店でした。
そこに行ってみたくて訪ねたお店には定休日の札が…..。しかし中に居た店主と思わしき方が
『よかったらどうぞ』と招き入れてくれました。決して広いとは言えない店内には、ぎっしりと想いの詰まった
器たちが並んでおり、色々なお話を交わしつつ、その中から数点、苦労の末なんとか選びました。
その数点の中には、今でもお世話になっている中田篤さんや、キムホノさんの作品がありました。
「よかりよ」さんともそれ以来、手紙やメールのやり取りをさせていただくようになりました。
月日は少し流れて、去年のちょうど今頃か、もっと暮れになっていた頃に
「よかりよ」の店主、八谷(やたがい)さんから連絡を頂きました。
キムさんが来年独立30周年を迎えるのを機に、アーカイブ展のような事をしたくて
しかもそれを日本巡回させたいんだという内容でした。
それは『いいですね~。』と本当にいいなあと思いながらも、
どこでやるのか羨ましいなと、ひと事のように聞いていたところ
なんと沖縄と当店ギャラリーseedbed galleryだけでということでした。
『海を渡れない人は三重で見たらいいさ〜。』という具合で…。
嬉しさの反面、「よかりよ」さんはキムさんの作品に出会って、お店を始められたような方でしたので、
「僕たちのようなひよっこが参加させていただくのは失礼なお話なのでは?」と考えてしまいました。
「まあとにかく三重に行くから、キムさんに一緒に会いにいこう!」と八谷さんと一緒に
個展開催中の名古屋の「橋本美術」さんに向かいました。そこで初めてキムさん本人に会う事が出来ました。
緊張して何を言ったかあまり覚えてないのですが、その場の圧倒的な作品群を目の当たりにして
できることなら展覧会を実現させたいと思い始めました。
その日以降、「合宿」と称してキムさんのアトリエに泊まり込み、大量の過去、現在の作品群を眺め、
キムさんの手料理を頂き、食後には必ず(一息入れるときも)珈琲を淹れてくれました。
そしていろんなお話を聞いて過ごすという機会に恵まれました。
そこでの数日は、いつも自分の中の何かを刺激され、そして何かを得たような気になる日々でした。
あれほど、生活の中からモノが生まれるということを体験した記憶はありません。
そこで生まれた多種多様な作品群が語りかけてきます。それは決して重くなく、
ほとんど冗談まじりで、それでいて、こちら側も試されているような、とても奥の深い体験でした。
そんな感覚が今でも、これからもキムさんに会うと続くのだろうなと勝手に想像してます。
そこで体験し、感じた事をそのまま2016年12月3日(土)からseedbed galleryにて
「キムホノ式」展覧会を開催致します。
今展には沢山の方に足をお運び頂き、おひとり、おひとりが、
それぞれの「キムホノ式」を感じていただけるように、
キムさん20代から現在までの作品に未発表の作品も加えて器はもちろんのこと、
オブジェや絵画や書、Tシャツにまで及ぶ、やく400点の作品を一同に並べますので、
頭を空っぽにして来ていただくもよし、考え事をしながらでも、おなかがすいていても、
どんな状態でも、何かが満たされるような展覧会になればと準備をしておりますので、
ぜひぜひ気軽にいらして下さい。会場でお待ちしております。
restaurant cultivate & seedbed gallery
山本祐也
vol.1 | 元坂酒造さんを訪ねて。
カルティベイトという場所を考えていたときに、
レストランで使用する食材は地元のものを中心にと思っていたので、
提供する飲み物も地元のおいしくて、楽しいものはないかと探し始めたのがきっかけで、
今回の元坂酒造さんに出会うことが出来ました。
再度訪れた元坂酒造さんは酒屋八兵衛というブランドで全国的にも知られる酒蔵で
三重県多気郡大台町に位置し山を背景に、伊勢神宮にも流れる宮川の上流にあり
敷地のすぐ脇にはまるで私道かのように熊野街道が通っている
日本の原風景をおもわせる場所です。
そんなところに到着すると、いつも柔らかな表情の奥に酒造りに対する熱い思いと誇りを
感じさせる杜氏でもある社長の元坂新さんと、なんとも華のある女将が出迎えてくれました。
最近は跡継ぎも育てられているようで、
創業文化二年(1805年)の歴史がまた繋がれていくとおもうと、こちらまで嬉しくなります。
こちらの蔵では酒米づくりも蔵人自らされ、中でも特徴的なのは幻の酒米となっていた
伊勢錦を蔵元が復活され、その米での酒造りも成功されました。
今回も酒造りの工程を聞きながら蔵の中を歩き、空気を感じながら
発酵中のものから出来上がりの数種類を利き酒させていただいたのですが、
いつまでも口の中に含んでおきたいような幸福感と、
酒に強くない僕はホロ酔い感でとても心地良くなってしまいました。
ホロ酔いはさておき、元坂酒造の醸される酒は
どれも口に含んだときに料理までイメージさせてくれるのです。
これは酒それだけで呑むことはもちろんのこと料理と合わせることで、
お互いが高め合い、口の中が幸せになるように
しっかりと丁寧に酒造りをされている証拠なのではないかと思います。
こんなことを書いていると、八兵衛の味と蔵人方々を思い出して、
また訪ねてみたくなってきました。(山本祐也)
清酒 酒屋 八兵衞 酒造元 / 元坂酒造株式会社
創業 文化二年(1805年)|〒 519-2422 三重県多気郡大台町柳原346-2
http://www.gensaka.com/index.html